導入企業紹介
木原興業株式会社は、様々な業種の工場、病院や大学などの電気設備を組み上げ、コンスタントに稼働するように最適なシステムを作り上げる、いわば”縁の下の力持ち”な会社です。岡山県に根差し、産業用電気機器を中心とした販売を行なう専門商社として成長を続けています。
長年行ってきた紙ベースの仕事をデジタル化するため、基幹システムのリプレースに着手。ERPパッケージを選定しましたが、それだけでは仕入先・取引先とのデータ連携ができない問題に直面しました。ノーコード型ETLツール「Reckoner」とDWHの 「Snowflake」を導入し、限られた予算及び準備期間の中で複数のデータ連携を実装しました。
Reckonerを導入した感想や今後の展望などについて、木原興業株式会社 特機営業部 主任 木原 康之(きはら やすゆき)さんにお話を伺いました。
課題と導入効果
課 題
- 基幹システムのリプレースを行うに当たり、選定したERPパッケージだけでは仕入先・取引先とのデータ連携ができない問題に直面した。社内にはエンジニアがいない中、限られた予算と準備期間の中でデータ連携を実装する必要があった。
効 果
- 低コストかつ短期間で、Snowflakeを中心にした複数のワークフローを構築できた
- 長年紙ベースで行ってきた業務が効率化され、社員一人当たりが取り扱える情報量が増加した
- 柔軟性の高いデータ処理が可能になり、ビジネスを拡張しやすい環境が整った
基幹システムのリプレースとあわせて、仕入先・取引先とデータ連携可能なReckonerを導入
――はじめに、御社の事業内容を教えてください。
当社は、岡山県岡山市に本社を置く創業約120年の歴史がある会社です。専門商社として工場や病院などに富士電機グループの商品をはじめとした電機品を卸しています。
――ご自身はどのような役割・業務を担当していますか?
電機品の販売営業を担当しています。これに加えて、約1年前から社内の情報システムの整備も任されています。社用iPhoneの導入や古いパソコンの買い替えなどから取り組みを始め、現在は注文書・納品書を印刷する基幹システムをERPパッケージに切り替える作業を進めています。
――Reckonerの導入前にどのような課題がありましたか?
当社では長らく紙ベースで業務を運用してきました。20年ぐらい前につくられた仕組みをずっと使い続けてきたのですが、このたび刷新することになり、基幹システムをリプレースするためにGRANDIT株式会社の中小企業向けクラウドERPパッケージ「Miraimil」を選定しました。
しかし、Miraimilの機能だけでは、仕入先や取引先とのデータ連携ができない問題に直面しました。データ連携の部分をスクラッチで開発しようと考え、外部のシステムインテグレーターに見積りを出してもらったのですが、金額もスケジュールも当社の希望と大きく乖離する内容で……。費用と準備期間を抑えてデータ連携を実現する方法を探していました。
――Reckonerを導入することにした経緯・理由を教えてください。
社内にはエンジニアがいないので、非エンジニアでも使いやすいETLツールを探したところ、Reckonerを見つけました。
選んだポイントは、ノーコードであることと、GUIがいいことです。「実行する時はここを押す」など簡単に操作できるので、これなら非エンジニアの社員にも受け入れてもらえるだろうと思いました。
あとは、クラウドで提供されること。他社のETLツールにはサーバーインストール型のものがありますが、その場合は自社で物理的なサーバーを持たなければなりません。クラウドの場合は自社で設備を持たずに利用できるので、そこも大きなポイントでした。
短期間でプロトタイプを作成した後、トライアンドエラーを重ねながら構築を進める
――どのようなプロセスでReckonerを導入しましたか?
まず、DWH(データウェアハウス)の Snowflakeにデータを取り込んで変換する仕組みづくりに取り組みました。その後、Snowflakeと業務を行う人間をつなぐところにReckonerを導入しました。
私も一緒に作業している外部のエンジニアの方もReckonerを触ったことはありませんでしたが、数日でプロトタイプを作成できました。そこから細かい部分を詰めていって、2週間ぐらいで大体のワークフローを構築できました。
現在は、基幹システムのリプレースプロジェクトを進めながら色々と試行しているところです。本格的な運用開始は2023年度内(※)を予定しています。
※本インタビューは2023年4月に実施
――具体的に、どのようなワークフローを構築したか教えてください。
Snowflakeを中心にした複数のワークフローを構築しています。
【構築中の主なワークフロー】
- 商品の情報(仕入れ価格・販売価格など)や取引先の情報をExcelファイルに入力し、Reckonerを経由してSnowflakeに送信。Snowflake上でデータを差分更新する。
- SnowflakeからReckonerを経由して請求情報などをCSVファイルに出力し、取引先にメールで送信する。
- 留意が必要な商品・取引の情報やエラーの情報を、Reckonerを経由してチャットツールのTeams上で関係者に通知する。
- Snowflakeから抽出したデータを基幹システムに取り込むためのファイルをReckonerの中で作成し、特定の場所に保存する(予め指定した時間に自動で実行)。
――ワークフローの中には、人の手が介在する作業も含まれていますね。
デジタル化を進めても、業界の特性上、人間が介在する作業も多く残ります。例えば、Snowflakeにデータを集約しても、CSVファイルを出力してメールで取引先に送ったり、メールで受け取ったファイルをSnowflakeに入れたりする必要があります。
SnowflakeはSQLを知らないと操作できないので、非エンジニアが直接Snowflakeを操作しなくてもデータ連携ができる仕組みを構築しました。
――実際に使ってみて、Reckonerの性能やサービスの品質についてどう感じていますか?
GUIがしっかりしているので使いやすいです。特に、複数処理を直列で連続処理できるところ。「読み込んで、変換して、送る」といった段階を踏むワークフローでも、視覚的・直感的に作れるところが非常にいいなと思います。
Reckonerは簡単に始められて、トライアンドエラーを重ねながらアジャイル方式で構築していけるので、その点も当社に合っていると感じています。
スリーシェイクには何度か質問や相談をしています。相談した内容をもとに、新機能の開発を検討してくれているものもあります。専任の担当者がつくので声をかけやすいですね。
Reckoner×Snowflakeで柔軟なデータ処理が可能に
――社員の皆さんが長年慣れ親しんできた仕組みが変わることになりますが、円滑に移行できそうですか?
ReckonerはGUIが優れていて操作しやすいツールですが、当社で長年使ってきた仕組みも操作自体は簡単なんですよ。「この画面でこのボタンを押せば大丈夫」という形で、当時の人が工夫してつくってくれたので。
そういう意味ではあまり大きな変化は生じないので、使いにくさを感じずに受け入れてもらえそうだなと思っています。
――Reckonerの導入により、どのような効果・変化を得られる見込みですか?
最大の効果は、将来的に拡張しやすい環境をつくれたことです。これまでは環境的にもスキル的にも変えることができませんでした。Reckonerの導入により、ノーコードで柔軟に変化できるようになりました。
昨今、電子帳簿保存法の改正など電子化・デジタル化に向かう世の中の流れがあります。しかし、現在もなお紙とFAXによる取引が多い商社業界では、自社だけで進めることはできません。仕入先や取引先にも変わってもらう必要があります。一朝一夕にはいきませんが、ReckonerとSnowflakeがあれば、どんな相手に対しても、どんな形のデータでも対応できるはず。お客様から「これをデータで対応できるのか」と尋ねられた時に、できると自信を持って回答することができる。これは、商社である当社にとって大きなメリットだと認識しています。
紙ベースの仕事から脱却し、ビジネスを拡張していく
――今後どのようにReckonerを活用していくか、展望をお聞かせください。
Reckonerを導入して新しい仕組みを構築しても、依然として物理的な制約があるため、一つの取引にかかる期間は短縮されません。しかし、紙では不可能だった量の情報を処理できるようになるため、一人当たりが扱える情報量は格段に増えると想定しています。
加えて、先に述べたように、仕事自体に拡張性が持てるようになる見込みです。「注文書を取りに行って、お客様のところに持参して……」といった紙を中心にした仕事を脱却し、注文・発注・配送を一貫したデータで管理・実行できるようになる。これを活かして、人海戦術を増やすことなくビジネスの拡張に取り組んでいけたらと考えています。
――最後に、スリーシェイクやReckonerに今後期待することがあればお聞かせください。
良い点は、どんどん機能が増えているところ。今後期待する点は、権限管理など細かい機能ですね。これから充実されていくだろうと期待しています。
Reckonerはそもそものコンセプトがいいですよね。根がいい。今の良いところを残しながら、機能を充実させていってもらいたいなと思います。
written by 三谷 恵里佳